ホームヘルパー資格廃止へ。介護の資格は介護福祉士に一本化?(介護職員初任者研修へ移行)
公開日: :
最終更新日:2019/09/09 コラム
介護の資格、介護福祉士に一本化
「ホームヘルパーの資格がなくなるって本当ですか?」
といった内容の書き込みや
メールによるお問い合わせをたくさんいただいています。
メールに関してはその都度、返信メールをさせていただいていますが、
結論だけを申し上げますと、「Yes,」です。
あまりに唐突過ぎたこの制度の変更について、
全体像が見えてきましたのでこの場を借りてお知らせします。
ホームへルパー廃止へ 100万人利用者に波紋
事の発端は、2004年9月6日産経新聞に掲載された、
「ホームへルパー廃止へ 100万人利用者に波紋」という記事でした。
以下、その記事より引用させていただきます。
主婦の副業として人気のある介護保険制度の「ホームヘルパー」(訪問介護員)が
原則廃止される方針が示され、波紋を広げている。国は国家資格である「介護福祉士」の業務に一本化することを検討している。
廃止が決まれば、介護福祉士に移行できない人も出るとみられ、
全国で二十万人規模のヘルパーの雇用だけでなく、
ヘルパーらの訪問介護サービスを受ける約百万人の利用者にも
大きな影響が出るのは必至だ。
この記事は大きな波紋を呼びました。
厚生労働省は当時、この方針について当初は否定していました。
詳しくは、茨城県議会議員井出よしひろ氏のブログに掲載されています。
が、2ヵ月後、この方針が正式に決定され、
介護に従事するための基礎資格を介護福祉士へ一本化するという
ニュースが発信されました。
それがこちら、
「ヘルパーを介護福祉士に 06年度から資格取得研修」
厚生労働省は13日、
介護現場で働くための資格要件を国家資格の介護福祉士に一本化する方針を固めた。介護福祉士の資格を持たず
既に介護職に就いているホームヘルパーなど23万7000人や
新たに介護の仕事を目指す人について、
2006年度から福祉士の資格取得に向けた研修を実施する。来年の介護保険制度改革の一環で、高い技術や知識を身につけてもらい、
介護の質を高めるのが狙い。ただ高齢化が進んで介護需要が増える上、
研修時間や費用の面で負担増となる可能性もあり、
完全移行にはかなり時間がかかりそうだ。現在、政府はフィリピンとの経済連携協定締結交渉で
介護に従事しているフィリピン人を受け入れる方針を示しており、
国内の介護職資格を統一することで受け入れ環境を整備する狙いもあるとみられる。
要約すると、
介護の質の確保のために、現行のホームヘルパー(1~3級)資格を改め、
国家資格である「介護福祉士」を介護業務に従事するための基礎資格とする、
つまり、「介護福祉士」でないと、「介護の仕事ができない」という方針です。
ホームヘルパー2級資格は、ホームヘルパーだけでなく、
施設で働くスタッフなどにとっても、介護業務に従事するための基礎資格であり、
「介護福祉士」資格を持っていない介護職にとっては、
「仕事ができなくなる」という大きな危機です。
また、介護福祉士に移行するための実務経験を持っている介護職は、
そのなかの一握りでしかありません。
大きな波紋を投げかけたこのニュースでしたが、
具体的なスケジュールなどが未定なままで、放り投げられ、
情報が錯綜している感もありました。
ホームヘルパー廃止へ 100万人利用者に波紋
ヘルパーを介護福祉士に 06年度から資格取得研修
研修時間150~500時間
2005年9月26日、ようやくその具体的な内容が示されました。
厚生労働省は26日、介護現場で働く人の条件を国家資格である介護福祉士に一本化するため、
ホームヘルパーなどを対象に実施する研修の時間数を決めた。ホームヘルパー2級の研修を終えた人は、実務経験1年以上が150時間、1年未満は350時間。
研修を受けたことがない人は、介護施設などでの実習140時間を含め500時間とし、
現在のヘルパー2級に必要な130時間に比べ大幅に時間を増やした。既に介護福祉士の資格を持つ人についても、希望者には専門性を高めるための200時間の研修を実施する。
研修は2006年度から始めるが、現在のヘルパー研修と並行して実施し、
既に働いている人については、当面、この研修を受けなくても仕事が続けられるようにする。
つまり、介護職になるためには、
介護福祉士へ移行するための研修を受ける必要があるのですが、
その研修時間が決められており、
下記の表のように研修を受けることになります。
実務経験 | 研修時間 |
実務経験1年以上 | 150時間 |
実務経験1年未満 | 350時間 |
ホームヘルパー資格未取得者 | 500時間(実習140時間含) |
現行のホームヘルパー研修が130時間であることを考えると、
この時間数増は介護の仕事を目指す人にとって、
そして、介護の仕事に現在従事している人にとって、大きな負担となります。
特に、ホームヘルパーの多くは、
非常勤で、家事や育児などと仕事を両立させている主婦の方々です。
果たして、それだけの研修時間を費やすことができるのか。
費用負担は?研修の開催主体は?
まだまだ明らかにされていない部分が大きく、
今後の情報に注目していかなければいけません。
ホームヘルパー資格はどこへ行く?
いくつかの疑問点を整理してみたいと思いますが、
まず、
既に働いている人については、当面、この研修を受けなくても仕事が続けられるようにする。
という、その「当面」がいったいどの程度なのか。
いつまで「ホームヘルパー2級」で介護の仕事を続けていくことができるのか。
こういった大まかなスケジュールが早く発表されることを願いたいと思います。
そして、
介護業務を誰が担うのか?
という問題です。
これだけの規模の研修を課すことで、
現在でもホームヘルパーはサービス需要に追いついていないのに、
誰が介護を担うのでしょう。
フィリピンなどからの労働力への期待も大きく影響していると思われます。
しかし、実際、外国籍の介護職が
日本の利用者にどのように受け入れられるのかはまだまだ未知数です。
そして、もう一点。
介護福祉士との差別化
も大きな問題です。
介護福祉士資格取得のための研修は1650時間。
しかし、介護福祉士を基礎資格とするといいながらも、
研修を受ければ500時間で介護の仕事に就くことができるわけで、
多くの研修時間を必要とし、資格試験もある
「介護福祉士」の存在意義というのも曖昧になってしまいます。
そもそも、ホームヘルパーが数多く生まれたのは、
介護保険の導入で圧倒的に不足するマンパワーを補うために、
主婦らの余剰時間でも取得できるホームヘルパー資格を中心に、
介護に従事する人材を大量生産したためです。
つまり、質の問題は度外視されており、サービスの量を確保するのが最重点課題でした。
しかし、
今度は質がともなっていないと、資格の壁を高くする。
これも、介護を含める社会保障の大幅な削減のひとつです。
軽度利用者への家事援助サービスの削減などからわかるように、
介護保険サービスは縮小に向けて大きく動いています。
それにともない、介護従事者も削減し、人件費の安い外国人労働者に依存する。
このシナリオのなかで、完全に置き去りにされているのは、
間違いなく、サービスを待ち望んでいる利用者なのではないでしょうか。
介護福祉士とヘルパー2級:井戸端会議掲示板
※追記
当サイトあてに、ヘルパー資格は取れなくなるのですか?無効になるのですか?
といったお問い合わせのメールをたくさんいただいています。
いま介護福祉士を取るか、ヘルパー2級をとるか、どちらがいいかと言われたら、
いまのうちにヘルパー2級を取得して、実務経験を積み、
将来的に介護職員基礎研修を受けることをおすすめします。
制度移行前に取得したヘルパー2級の資格と実務経験があることで、
基礎研修の受講も大幅に免除されます。
ヘルパーの資格は2006年度から使えなくなる、という虚偽の情報を流して
介護福祉士養成講座をすすめるたちの悪い専門学校や通信講座があるそうです。
虚偽の情報に惑わされないようにお気をつけください。
平成17年9月掲載
追記
2012年の介護保険法の改正により、2012年4月から行われる予定でした介護福祉士の資格取得方法の変更については、
2015年4月からに延期となりました。
ホームヘルパー二級に代わる資格として介護職員初任者研修が設定され、介護福祉士へのルートが確立されましたので、こちらの記事をご参照ください。
介護の資格を取るなら?ホームヘルパー2級養成研修、平成24年度末で廃止へ
追記
※コメントによりご指摘を頂きました。
情報を更新しておらず申し訳ありませんでした。
2012年から見直しされる予定だった介護福祉士資格取得要件の変更ですが、延期が決定しました。
介護福祉士受験資格となる要件の見直しは2017年1月試験から適用される予定です。
2016年1月の試験までは現行制度の実務経験等の受験資格が適用されます。
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