24時間地域巡回型訪問介護サービスとは
公開日: : コラム
地域包括ケアの柱としての新サービス「24時間地域巡回型訪問介護」
2012年4月の介護保険法改正が近づく中、大きな注目を集める新設サービスがあります。
それが、今回取り上げる「24時間地域巡回型訪問介護サービス」になります。
それがどんなサービスであるかについて、厚生労働省から発表されている内容を元に紹介いたします。
重度で独居の高齢者でも、施設で生活するような安心感を在宅で
24時間地域巡回型訪問介護サービスは、重度で独居の高齢者でも、在宅で生活していくことが可能になるよう、
特養のように切れ目ないサービスを提供していくというコンセプトのもとに設計されたサービスになります。
その内容は、一日複数回・短時間での定期訪問、
オペレーターへの連絡で提供される随時訪問、
看護サービスとの一体的なサービス提供、
時間に制約されることのない柔軟なサービス・・・と、
特養での生活のイメージに近い手厚いケアを在宅でも受けることができるという
高い理想を掲げているこのサービスですが、ハードルは非常に高いと思われます。
サービス導入のコストは?
事業所にとって採算がとれるのか?
そして最大の問題は、スタッフが確保できるのかどうかという部分になるでしょう。
厚生労働省が想定しているイメージとしては、
常勤換算で介護スタッフ22.8人、看護職員1.71人に加え、
オペレーターと面接相談員の配置としておりますが、
夜間も含めたスタッフの確保というのは大きな課題です。
また、厚生労働省の思惑として、
利用者の生活を包括的・継続的に見ることで、チームケアが強まり、
専門性の向上ややりがいの醸成が期待されるということですが、
随時訪問を含めた訪問で、不規則勤務を行うスタッフの肉体的・精神的な負担は極めて大きく、
バーンアウトしてしまうケースが増えてしまうのではないかという懸念もされます。
理想ばかりが先行してしまっている印象も否めないため、
すでに介護福祉関係者からも疑問の声が多く聞かれています。
今後のモデル事業などの展開を通して、制度化にむけて情報を確認していきたいと思います。
どうなる、地域包括ケア
この24時間地域巡回型訪問介護サービスも、
市町村が指定を行う地域密着サービスに分類されます。
新しい介護保険のコンセプトである「地域包括ケア」を実現させるための、
重要なサービスとして期待されているようです。
「地域包括ケア」システムというのは、介護・医療・福祉に加え住宅などといった生活支援を、
生活圏域(30分以内に駆けつけられる)の中で適切に提供するというものなんだそうです。
個人的に、注目してほしいのは、住宅(住まい)というキーワードだと思っています。
在宅重視という介護保険のコンセプトの中で、
在宅という考え方も多様化しています。
地域包括ケアシステムの推進をはかるために、
安易に住み慣れた自宅での生活から切り離し、
集合住宅に住まわせ、効率的な短時間訪問のサービス提供を行うことが
果たしてその人らしい生活を支える社会システムのあり方なのかというと、はなはだ疑問です。
しかしながら、高齢者専用賃貸住宅などをはじめとした住まいのマネジメントとの組み合わせが、
在宅の重度高齢者を支えるひとつの鍵になっていくように思われます。
平成23年4月19日掲載
アドセンス336
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