ホームヘルプサービス論
公開日: : 社会福祉概論
社会福祉概論第3回 ホームヘルプサービス論
今回はみなさんと深い関わりにある、というか、
みなさんのうち多くが従事しているホームヘルプサービスについてです。
ホームヘルプサービスとは
ホームヘルプサービスとは、介護保険法7条の定義によると、
「訪問介護」とは、要介護者又は要支援者であって、居宅において介護を受けるものについて、
その者の居宅において介護福祉士その他政令で定める者により行われる
入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって、
厚生省令で定めるものをいう。
という条文に定義される訪問介護サービスを意味し、
簡単に言えば在宅での日常生活の支援を行うサービスということになります。
前回に説明した通り、ホームヘルプサービスは「契約」に基づいています。
援助者と被援助者の関係は、「救済者」と「弱者」ではなく、
「サービス提供者」と「サービス利用者」です。
もちろん、サービス提供者とはヘルパー個人ではなく、ホームヘルプサービス事業者です。
ホームヘルプの業務とは
利用者の家庭内でその日常生活を支えるという、
非常に曖昧な定義に基づく業務であり、グレーゾーンの極めて大きい職業です。
どこからどこまでをホームヘルプサービスの業務範囲とするのか、
ヘルパーによる医療行為や
日常生活に支障をきたさない業務や家事に含まれないとされる業務など、
そのグレーゾーンに関する議論は事欠きません。
なぜこのような問題が生じるかというと、
利用者側を含め、社会一般にヘルパーに対する専門職としての認識の薄さがあげられます。
業務内容はお手伝いさん、家政婦さんと同じという認識がいまだに根強く、
その誤解が利用者とヘルパー・事業者の関係を巡る悪循環を生んでいます。
それを解決していくためには
契約時の説明やヘルパー自身の意識向上といった事業者側の努力が必要になります。
ホームヘルプサービスの業務範囲を巡る最大のポイントは、
介護保険法が「自立支援」を目的としているということです。
本人の自立のために何が必要なサービスか、
掃除や料理が必要だというだけではなく、
本人がその生活をより豊かなものにしていくために、
どのような支援が必要なのかを見つめていくことが
ホームヘルプサービスの視差です。
その視差から見れば、どんなサービスが必要かが見えてくるのではないでしょうか。
専門性と総合性
介護保険を支える専門職としてホームヘルパーは存在するわけですが、
残念ながらホームヘルパーは他の専門職から
評価されるという機会が多くはありません。
むしろ、その劣悪なケアの質を問題視する声があとを耐えません。
介護保険導入を控え、最も緊急の課題となったのは
在宅介護を支えるマンパワーの圧倒的な不足です。
それを補うためにホームヘルパーという職業に白羽の矢が立ちました。
ホームヘルパーは在宅介護を支えるマンパワーの量的な拡充を目指したため、
その質の拡充に関しては問題とされませんでした。
思惑通り、ホームヘルパーを大量生産することに成功しました。
結果、その質に関しての問題は置き去りにされたまま残りました。
しかし、それと同時にヘルパーが他の専門職から低位に見られているのは
ヘルパーが専門職であると同時にまた別の側面を持っているからです。
つまり、ヘルパーはスペシャリストでもあり、同時にジェネラリストでもあるのです。
ヘルパーは利用者の生活全般に渡る支援をその傍らで行うものであり、
その能力は専門性と総合性が求められます。
医療のスペシャリストである看護師やその他専門職と比較されること自体
それは間違っているとしか言えないのではないでしょうか。
ヘルパーの専門性は医療職の専門性とはまったく異なっているのですから。
ホームヘルプサービスの意義
ホームヘルプサービスは利用者の生活の最も根底になる部分を支えるものです。
利用者の傍らで、その願いや変化を感じ取り、
それを次のケアにつなげていくという大きな役割を持っています。
人対人であるという部分が最も色濃く感じられるサービスであり、
サービス従事者にとってもこれにまさる魅力はないでしょう。
ヘルパーひとりひとりが、その意義と高い意識を持って
サービスに従事されることを願っています。