福祉国家論
公開日: : 社会福祉概論
社会福祉概論第4回 福祉国家論
今回の社会福祉概論。
ちょっとアカデミックに福祉国家論にせまります。
夜警国家と福祉国家
「福祉国家論」という考え方は、当時の「夜警国家」に相反する
国家のあり方を指した言葉です。
夜警国家と呼ばれたそれまでの国家は
政府の活動を国防や治安維持に限定したものとし、
国民生活への政府による干渉を制限するというものです。
「消極国家」と呼ばれる夜警国家に対する考え方として生まれたのが
「積極国家」と呼ばれる福祉国家論です。
20世紀に入ると、労働者と資本家の格差が拡大し、
社会的・経済的矛盾が生まれました。
そこで生まれたのが福祉国家論であり、
政府が積極的に市場経済に介入することによって社会的・経済的矛盾を解決する方法になります。
社会保障政策や完全雇用実施を通して、富の不平等の是正や
国民生活の安定、福利の増進を図るものでした。
理想の福祉国家、スウェーデンのいま
理想の福祉国家としてもてはやされてきたスウェーデン。
いまでもスウェーデンの福祉を目標とする知識人は後を絶ちません。
高負担・高福祉を実現してきたスウェーデン。
国民への税負担は尋常ではないものの、理想的な福祉国家、のはずでした。
しかし、福祉国家は大きな行き詰まりを見せています。
まずひとつは世界的な不景気によるものです。
高いコストによって実現してきた福祉は、
経済成長なしには実現することはできません。
当然、福祉の見なおし、予算の大幅な削減が実施されてきました。
モラル・質の低下が極端に進んだスウェーデンの福祉を
「理想」と誇りを持つ国民も少なくなりました。
もうひとつ、スウェーデンが直面した大きな問題は「家族の崩壊」です。
行政サービスとして提供されるホームヘルプサービス。
女性の社会進出の進むスウェーデンにおける女性の労働、
その多くは介護・福祉に依存しています。
もちろん、その半分以上はパートタイム労働です。
そして、女性の社会進出が進んだ結果として残ったのが「家族の崩壊」でした。
母親は自分の子供の育児をせず、子供を公的機関のサービスに任せて、自分は仕事をし、
娘は自分の親の介護をせず、親を公的機関のサービスに任せて、自分は仕事をし、
妻は家事をせず、家事を公的機関のサービスに任せて、自分は仕事をします。
それが極端に進んだ形で実現した国家がスウェーデンです。
家族というものの意味が見出せず、
結婚するカップルの半分は離婚という歪んだ社会が生まれてしまいました。
ついでに、犯罪発生率も高く、
強盗は日本の100倍以上、強姦は日本の20倍以上。
治安も悪化し、福祉国家モデルは完全に崩壊を迎えました。
日本型福祉国家の創造
大体、日本の人口はスウェーデンの人口の17倍。
小さな国家スウェーデンと日本とを単純に比較して、
それをモデルに政策実施するということ自体が間違っています。
それでは、日本は何を目指していけばいいのでしょう。
日本は今、アメリカ型福祉国家を志向しています。
民間企業など、市場を通して福祉サービスを提供するシステムです。
競争原理を導入し、よりよいサービスの提供を目指したものですが、
企業にとって市場として魅力がなければそれは成立しません。
そこで市場からはじき出された人々を救済していくかが
国家に残された大きな課題です。
日本は、また新しい福祉国家システムを構築する必要に迫られています。
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