介護保険法を読み返す。介護保険法解説と介護保険サービスのあり方について。
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最終更新日:2019/05/16 コラム
介護保険法を読み返す
今回のテーマは「介護保険法」です。
介護保険、介護保険といいながら、
意外と「介護保険法」に目を通した方は少ないのではないでしょうか。
介護保険がホームヘルパーにとってのフィールドであり、
介護保険法はそれを規定するものであり、その根幹になっています。
そこで、介護保険の持つ理念や目的を
「介護保険法」から今一度見つめなおしていきたいと思います。
第一章 総則
(目的)第一条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、
入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、
これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、
必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、
国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、
その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、
もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
まず、一番注目して欲しいのが
「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」
という点です。
介護保険の目的は高齢者へのサービスを提供することではなく、
自立に向けた支援を行っていくということなんです。
ホームヘルパーの仕事も当然、ただサービスを提供するわけではなく、
継続的なケアを通して利用者の自立を目指していくことにあります。
利用者の言いつけ通りに行動したり、
ただ家事や身体的なサービスを行うだけではホームヘルパーの仕事とは言えません。
ホームヘルパーは常に「その人にとっての自立」を目標にしなければいけません。
「その有する能力に応じ」というのは、
それぞれの心身の状態をもとに、
それに応じた個別の目標を設定していくことです。
(国民の努力及び義務)第四条
国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、
加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、
要介護状態となった場合においても、
進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、
その有する能力の維持向上に努めるものとする。2 国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする。
介護保険法は高齢者のための法律、と考えている方も多いと思いますが、
実はここに「国民は」という私たち日本国民全てについて規定した条文があります。
予防や健康の保持増進について規定したものですが、
もっと重要なのは、その2であり、
「国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする」
というものです。
ここで、国民全体で介護保険の基盤となる費用を負担することが規定されています。
「共同連帯」という言葉は難しいですね。簡単に言えば支え合いなのでしょうが。。。
(定義)第七条
この法律において「要介護状態」とは、
身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、
厚生省令で定める期間にわたり継続して、
常時介護を要すると見込まれる状態であって、
その介護の必要の程度に応じて厚生省令で定める区分
(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するものをいう。2 この法律において「要介護状態となるおそれがある状態」とは、
身体上又は精神上の障害があるために、厚生省令で定める期間にわたり継続して、
日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態
(厚生省令で定める程度のものに限る。)であって、要介護状態以外の状態をいう。3 この法律において「要介護者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 要介護状態にある六十五歳以上の者
二 要介護状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、
その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が
加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって
政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によって生じたものであるもの4 この法律において「要支援者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 要介護状態となるおそれがある状態にある六十五歳以上の者
二 要介護状態となるおそれがある状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、
その要介護状態となるおそれがある状態の
原因である身体上又は精神上の障害が特定疾病によって生じたものであるもの
介護保険における「要介護」というものを定めたものです。
ポイントは継続して常時介護を要する状態ということでしょうか。
介護保険は医療と異なって継続性を前提としています。
「特定疾病」というのは15種類。
筋萎縮性側索硬化症、脊椎小脳変性症、パーキンソン病、慢性関節リウマチなど、
特定疾患について、詳しくはこちら。
※2006年4月から、末期がんが特定疾病に加わったため、特定疾病は16種類となっています。
附則
検討
一 介護保険制度については、
要介護者等に係る保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の状況、
保険給付に要する費用の状況、国民負担の推移、社会経済の情勢等を勘案し、
並びに障害者の福祉に係る施策、医療保険制度等との整合性及び市町村が行う介護保険事業の円滑な実施に配意し、
被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲、保険給付の内容及び水準並びに保険料及び納付金
(その納付に充てるため医療保険各法の規定により徴収する保険料等を含む。)の負担の在り方を含め、
その全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとすること。
二 政府は、この法律の施行後、保険給付に要する費用の動向、保険料負担の状況等を勘案し、
必要があると認めるときは、居宅サービス、施設サービス 等に要する費用に占める介護給付等の割合について、検討を加え、
その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
三 政府は、制度の見直し等に係る検討をするに当たって、
地方公共団体等から意見の提出があったときは、
当該意見を十分に考慮しなければならないものとすること。
2003年4月に介護報酬の単価改正が行われますが、
これは現行の単価による悪循環が招いた修正ではなくて、
あらかじめ3年後には単価改正を行うことを計画していたものによります。
そういった単価の見直しが行われることを規定しています。
また3年後には見直しされると思いますが、
そのときはどうなっているのでしょうか。
下手な法律解釈のようになってしまいましたが、
介護保険法で大事だなと思われるところだけを抜粋して紹介しました。
全文読むのは大変でしょうが、
介護保険制度(厚生労働省)
介護保険法(厚生労働省)
平成14年 掲載
アドセンス336
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