「痴呆」に替わる用語、「認知症」
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最終更新日:2014/01/22 コラム
「痴呆」に替わる用語、「認知症」
「痴呆」という言葉がなくなる。
厚生労働省が発表した「認知症」という新用語。
そのいきさつと意味に迫ります。
「痴呆」から「認知症」へ
このサイト内でもアンケートをとるなどして、
皆さんからの意見を募集しました。
厚生労働省では「痴呆」に替わる用語を
9月からパブリックコメントとして募集。
今回。「痴呆」に替わる用語として決定したのは
「認知症」という名称でした。
用語変更の背景
「痴呆」という言葉には「侮蔑的な意味合い」が含まれているということが発端でした。
厚生労働省では検討会を発足。
9月からは一般に広く意見を募集するパブリックコメントを募り、
今回の新用語決定に至りました。
痴呆の新呼称は「認知症」 厚労省、行政用語を変更
こういった用語や名称変更といった動きが数多く見られています。
最近でも「精神分裂症」を「統合失調症」として変更するなど、
さまざまな新用語が決定されています。
一連の、病気・障害当事者本位という流れのなかで
「痴呆」という用語の変更が検討されてきました。
「言葉狩り」という批判がありながらも、
今後も、「障害者」を「障がい者」に用語変更する案など、
こういった取り組みが数多く見られる可能性があります。
当サイトにて行ったアンケートの結果
この件について、当サイトではアンケートを実施してきました。
痴呆に替わる用語を考えよう
その結果は以下。
順位 | 用語候補 | 票数 |
1位 | 「痴呆」は「痴呆」のままでいい | 48票 |
2位 | 認知障害 | 17票 |
3位 | アルツハイマーと脳血管性で分ける | 6票 |
3位 | ディメンチア | 6票 |
5位 | メモリアル症 | 5票 |
5位 | 認知行動不全 | 5票 |
7位 | 高次脳機能失調症 | 4位 |
7位 | 夢老人(ゆめおいびと) | 4票 |
8位 | 記憶障害 | 3票 |
9位 | 記憶不全症候群 | 2票 |
10位 | 治包(チホウ) | 2票 |
10位 | 知豊(チホウ) | 2票 |
10位 | 脳萎縮 | 2票 |
以下1票 | 回顧症・健忘症・認知失調・老童 |
11月22日現在、111票の投票が行われました。
ご協力本当にありがとうございます。
この投票結果は、10月26日、厚生労働省へパブリックコメントとして提出しています。
このアンケートで圧倒的に得票したのは
「痴呆」は「痴呆」のままでいい
というものでした。
その意見として多かったのは「言葉を変えても意味がない」など、
「痴呆」という言葉自体への評価ではなく、
こういった名称変更を行う「言葉狩り」への批判的な内容が目立ちました。
ちなみに、「認知症」という用語は一票も投票されていませんでした。
新しい痴呆ケア
この名称変更が急ピッチに進められてきたのは
「新しい痴呆ケア」への意識の転換を狙う意図があったと思われます。
厚生労働省によって策定された「2015年の高齢者介護」にも、
「新しい痴呆ケア」は大きな課題とされており、
現在、痴呆性高齢者グループホームやユニットケアなど、
当事者の尊厳を保持し、安心した生活を送れるためのケアモデルが実践されています。
こういった大きな転換期にあり、
「新しい痴呆ケア」にむけて「痴呆」という言葉の負のイメージを払拭するために
今回の用語変更にいたったのではないかと予想されます。
「言葉狩り」に対する批判は多く聞かれるものの、
こういった機会によって、
その用語の意味や、その由来を知ることは
大きな意味があるのではないかと思います。
特に、私たち若い世代は、
その言葉にどんな意味が込められていたのかを一切考えず、
無批判にその言葉を日常的に使っています。
私たちは当事者ではないので、
「痴呆」と呼ばれる当事者の気持ちを図り知ることは出来ません。
けれど、「痴呆」という言葉が以下のような意味を持ち、
当事者がそういった偏見にさらされる社会にあったことは忘れてはいけません。
ちほう 【痴呆】
(1)愚かなこと。
(2)一度獲得された知能が,後天的な大脳の器質的障害のため進行的に低下する状態。
老年痴呆・進行麻痺・アルコール精神病・頭部外傷・癲癇(てんかん)・分裂病などでみられる。
痴呆症。三省堂提供「デイリー 新語辞典」より
平成17年 掲載
アドセンス336
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