新型コロナウイルスに立ち向かう。ホームヘルパーがウイルスから身を守るために。
新型コロナウイルスの感染は世界規模で拡大
新型コロナウイルスの感染は世界規模で拡大しており、世界経済に与えるダメージも甚大なものになっています。
海外渡航の制限やオリンピックの開催延期もあり、経済の停滞や移動の制限など、ますます今後の社会生活に影響が生まれてくるでしょう。
基礎疾患をお持ちの高齢者にとっては新型コロナウイルスによる肺炎症状で死に至るケースも多く、特に注意が必要です。
首都圏での感染ケースも多くなっており、今後も引き続き手洗い・うがいなどの防護策は重要です。
介護の現場への影響も甚大
介護の現場でも新型コロナウイルスの感染者が利用していたデイサービスや介護老人保健施設などが集団感染を引き起こすクラスターとして名指しで批判されるなど、非常に大きなリスクと向き合うことになっています。
社会福祉施設等の感染拡大防止の留意事項
基本的にはこちらの記事にも掲載していますが、国からの通知により、職員については出勤前の検温や発熱者などの施設等入所への制限などが行われています。
○社会福祉施設等(通所・短期入所等に限る。以下同じ。)の職員については、出勤前に各自で体温を計測し、発熱が認められる(37.5度以上の発熱をいう。以下同じ。)場合には、出勤を行わないことを徹底する。
社会福祉施設等にあっては、該当する職員について、管理者への報告により確実な把握が行われるように努めること。過去に発熱が認められた場合にあっては、解熱後24時間以上が経過し、呼吸器症状が改善傾向となるまでは同様の取扱いとする。
なお、このような状況が解消した場合であっても、引き続き当該職員等の健康状態に留意すること。
ここでいう職員とは、利用者に直接サービスを提供する職員だけでなく、事務職や送迎を行う職員等、当該事業所の全ての職員やボランティア等を含むものとする。委託業者等についても、物品の受け渡し等は玄関など施設の限られた場所で行うことが望ましく、施設内に立ち入る場合については、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には立ち入りを断ること。
○該当する職員については、「「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」を踏まえた対応について」(令和2年2月17日厚生労働省子ども家庭局総務課少子化総合対策室ほか連名事務連絡)を踏まえ、適切な相談及び受診を行うこととする。
○なお、新型コロナウイルス感染症への対応等により一時的に人員基準を満たすことができなくなる場合等については、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月17日厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名事務連絡)等により柔軟な取扱いが可能とされているので、同事務連絡を参照されたい。
介護保険最新情報 Vol,769
利用者に関しても発熱がある場合はデイサービスなどの利用を断るように記載されています。
そして、デイサービスやショートステイを利用できなかった利用者に関しては・・・
○社会福祉施設等の送迎に当たっては、送迎車に乗車する前に、本人・家族又は職員が本人の体温を計測し、発熱が認められる場合には、利用を断る取扱いとする。
過去に発熱が認められた場合にあっては、解熱後24時間以上が経過し、呼吸器症状が改善傾向となるまでは同様の取扱いとする。
なお、このような状況が解消した場合であっても、引き続き当該利用者の健康状態に留意すること。○発熱により利用を断った利用者については、社会福祉施設等から当該利用者を担当する居宅介護支援事業所又は相談支援事業所等(以下「居宅介護支援事業所等」という。)に情報提供を行い、当該居宅介護支援事業所等は、必要に応じ、訪問介護等の提供を検討する。
訪問介護等の提供等を行う場合には、別紙2を踏まえた対応を徹底すること。○市区町村や社会福祉施設等においては、都道府県や衛生主管部局、地域の保健所と十分に連携の上、必要となる代替サービスの確保・調整等、利用者支援の観点で居宅介護支援事業所等や社会福祉施設等において必要な対応がとられるように努めるものとする。
介護保険最新情報 Vol,769
居宅介護支援事業所等は、必要に応じ、訪問介護等の提供を検討する。
と記載されています。
セーフティネットとしての訪問介護の意義
デイサービスやショートステイが利用できないのだから、その穴埋めに、訪問介護で対応しろと。
発熱で新型コロナウイルスの感染の疑いがある利用者宅に訪問しろということです。
非常にリスクの高い業務を背負わなければいけないのが訪問介護のヘルパーになります。
もともと訪問介護のサービスを利用していた利用者であればともかく、そうでない利用者に対して、突発的な依頼があった場合はどうするべきか。
本人に感染疑いがある場合は?
主介護者である家族が感染・入院するなどして、濃厚接触者である利用者だけが残された場合は?
ケアマネジャーや主治医、行政とも連携しながら、様々なケースに応じて対応をしていかなければいけません。
マスクの確保という課題
また、マスクが入手困難になっていることも大きな課題です。
厚生労働省が訪問介護を含むサービス事業所への布製マスクの配布を決定しました。
ただ、毎回洗うことの手間もかかります。
管理や取り扱いが不十分であれば、使い捨てに比べて感染のリスクも大きくなると考えられます。
最もリスクの大きい最前線で奮闘するホームヘルパー
最もリスクの高い仕事を背負わなければいけないホームヘルパー。
最後の砦として、これだけセーフティネットとして重要な役割を持っているのであれば、介護報酬の面でも、見直し・評価してもらう機会なのかもしれません。
しっかり感染拡大予防のためのマニュアルを徹底していきましょう。
具体的な内容は、以下の厚生労働省が発表した留意事項にまとめられています。
訪問介護事業所等における対応
①訪問介護事業所等が新型コロナウイルスの感染が疑われる者を把握した場合
訪問介護事業所等が新型コロナウイルスの感染が疑われる者を把握した場合、当該事業所は、保健所等に設置されている「帰国者・接触者相談センター」に電話連絡し、指示を受けること。また、速やかに管理者等への報告を行い、当該事業所内での情報共有を行うとともに、指定権者への報告を行う。
さらに、当該利用者の主治医及び担当の居宅介護支援事業所等に報告を行う。
なお、保健所の指示があった場合は、その指示に従うこと。
感染が疑われる者との濃厚接触が疑われる職員のうち発熱等の症状がある場合は、自宅待機を行い、保健所の指示に従う。
発熱等の症状がない場合であっても、保健所と相談の上、可能な限りサービス提供を行わないことが望ましい。②濃厚接触が疑われる利用者に係る適切な対応の実施
①の報告を受けた居宅介護支援事業所等は保健所と相談し、生活に必要なサービスを確保する。
その際、地域の保健所とよく相談した上で、訪問介護の必要性を再度検討すること。③訪問介護事業所等がサービス提供を行う場合
②の結果、訪問介護の必要性が認められ、サービスを提供することとなる場合には、以下の点に留意すること。
・基礎疾患を有する者及び妊婦等は、感染した際に重篤化するおそれが高いため、勤務上の配慮を行うこと。
・サービスの提供に当たっては、地域の保健所とよく相談した上で、感染防止策を徹底すること。具体的には、サービス提供前後における手洗いやうがい、マスクの着用、エプロンの着用、必要時の手袋の着用、咳エチケットの徹底を行うと同時に、事業所内でもマスクを着用する等、感染機会を減らすための工夫を行うこと。(サービス提供にあたっての留意点)
社会福祉施設等における感染拡大防止のための取組の徹底について :厚生労働省
・自身の健康管理に留意し、出勤前に各自で体温を計測して、発熱や風邪症状等がある場合は出勤しないこと。
・濃厚接触が疑われる者とその他の利用者の介護等に当たっては、可能な限り担当職員を分けての対応や、最後に訪問する等の対応を行う。
・訪問時間を可能な限り短くできるよう工夫を行う。ただし、やむを得ず長時間の見守り等を行う場合は、可能な範囲で当該利用者との距離を保つように工夫する。
・訪問時には、換気を徹底する。
・濃厚接触が疑われる者のケアに当たっては、職員は使い捨て手袋とマスクを着用すること。咳込みなどがあり、飛沫感染のリスクが高い状況では、必要に応じてゴーグル、使い捨てエプロン、ガウン等を着用する。
・体温計等の器具については、消毒用エタノールで清拭を行う。
・サービス提供開始時と終了時に、液体石けんと流水による手洗いまたは消毒用エタノールによる手指消毒を実施する。手指消毒の前に顔(目・鼻・口)を触らないように注意する。「1ケア1手洗い」、「ケア前後の手洗い」を基本とする。
感染が疑われる場合というか、無症状感染者もいるので、できる限り対策はしておくべきだと思います。
特に重要なポイントとしては
・担当職員を分ける
・換気の徹底
・液体せっけんと流水による手洗いまたは消毒用エタノールによる手指消毒
が挙げられると思います。
担当職員を分ける
同じ日にいくつもの家庭を訪問するホームヘルパー。
マンパワーがあれば担当利用者を絞って1:1なんて対応できるのかもしれませんが、ただでさえ少ない人員でまわしているのですから、担当職員を完全に分けることは非常に困難だと思います。
濃厚接触者が出た場合は、濃厚接触者専用ヘルパーを決めるとしても、濃厚接触の利用者と接するヘルパーは事業所にウイルスを持ち帰る可能性も高いので、勤務体制をどうするか。また、使用する物品などはどのように消毒などしていくか。
事業所内での検討が必要になります。
換気の徹底
新型コロナウイルスの感染予防として、3つの密を避けることが有効であると言われています。
換気の悪い密閉空間・多数が集まる密集場所・間近で会話や発生をする密接場面。
このなかで訪問介護で最もリスクとして警戒しなければいけないのは「換気の悪い密閉空間」という部分でしょう。
窓を開けるなどして必ず換気を行うようにしましょう。
手洗い・手指消毒
そして、何よりも大事なのは手洗い・手指消毒です。
利用者宅の訪問前に手洗い。退室時に手洗い。できなければ手指消毒。
消毒用エタノールもなかなか入手困難になっているので、大変だとは思います。
自分の身を守るためだけでなく、自分の周りにいる家族や同僚などを守るためにも大事な感染予防、しっかり徹底していきましょう。
追記:訪問介護での感染事例
広島県三次市、50代ホームヘルパー
訪問介護でクラスター発生か 50代スタッフの感染判明 広島・三次
広島県は10日、同県三次市に住む介護員の50代女性が新型コロナウイルスに感染したと発表した。既に感染が判明している市内の80代女性2人を訪問介護しており、県はクラスター(感染者集団)が発生した可能性もあるとみている。県内の感染者は30人となった。
50代女性はそれぞれ、3月16~27日にAさん宅を計4回、同23日~4月6日にBさん宅を計5回訪問。3月31日に発熱したものの症状が改善し、2人の感染が判明後、4月10日に受けた検査で感染が確認された。県はほかにも複数の高齢者を担当していたとみて、濃厚接触者の特定を急いでいる。
Yahoo!ニュースより
訪問していた2名の利用者の感染が確認されています。31日に発熱があったものの、改善し、その後もサービス提供を行っていたようです。
※続報ですが、この件で遺族が訪問介護事業所の運営会社を損害賠償で訴えています。詳細はこちら。
福島県郡山市、20代ホームヘルパー
郡山市の女性は高齢者の介護サービス事業所に勤める介護職員で、訪問介護をしていた。1日に味覚や嗅覚の異常が現れ、5日以降に倦怠(けんたい)感やせきが出たため、7、9の両日に医療機関を受診した。濃厚接触者は2人で、1人は保育所に通う女性の子ども。7日時点で発熱があり、女性と共に医療機関を受診した。市が検査の準備を進めている。
福島民友新聞より
この方は濃厚接触者は自分のお子様を含めた2名ということで、おそらく感染以降は勤務していなかったのでしょう。
追記:訪問介護員の資格のない人のサービス提供も認められる
新型コロナウイルスにより、訪問介護が在宅介護の「最後の砦」と認知されてきています。
ところが、その最後の砦も人材不足でサービス提供するスタッフの人員を確保できない状況です。
そこで、厚生労働省では、Q&Aにてこのような通知を行っています。
④-7 通所介護等の利用が出来なくなった発熱等の症状のある利用者に対する訪問介護の提供増加や職員の発熱等により、人員基準上の必要な資格を持った人員が確保出来ない場合、基準違反となるのか。
基本的には、介護支援専門員が調整のうえ、有資格者を派遣する事のできる訪問介護事業所からサービス提供されることが望ましいが、令和2年2月17日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」別添1(7)で示しているとおり、指定等基準を満たすことが出来なくなった場合であっても、それが一時的なものであり、かつ利用者の処遇に配慮したものであれば、柔軟な対応をして差し支えないものであり、その際、訪問介護員の資格のない者であっても、他の事業所等で高齢者へのサービス提供に従事した事がある者であり、利用者へのサービス提供に支障がないと認められる者であれば、訪問介護員として従事することとして差し支えない。
「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」のまとめ
訪問介護のサービス提供には、介護職員初任者研修修了(かつてのホームヘルパー二級資格)以上の介護資格が必要ですが、その要件を緩和するというものです。
たとえば、同一法人で併設のデイサービス休業期間中しているため、訪問介護に一か月間ヘルプに来るデイサービススタッフが初任者研修を受けていない無資格だとしても、デイサービスでの勤務経験があれば保険給付のサービスとして訪問介護を提供していいということだと思います。
もしくは、事業所に介護予防・日常生活支援総合事業での訪問型サービスなどで生活援助のみを行うスタッフを訪問介護事業所で雇用している場合もあると思いますので、そういった方はこの対象になるのかもしれません。
追記:厚生労働省youtubeにて感染予防動画を公開
ホームヘルパーが新型コロナウイルスを持ち込まないというテーマが厚生労働省が動画を作成しています。
今回は「持ち込まない」をテーマにしており、ヘルパーが身を守るというよりも利用者を感染させないという観点から、しかも実際のケアがスタートして導入の部分のみだけです。
ひとつひとつの動作を確認しながら感染予防していくことが、どれだけの手間がかかることかを動画からも確認することができますね。
ということで、ちょっとリアリティの感じられない動画ですが、今後も第二弾・第三弾と公開していくようです。
アドセンス336
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